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世界が希望を取り戻したその日だ。絶望を払い、待ち続けた光に約束したことを、果たしたその夜。ベッドに入る前にふと見上げた、窓の外で輝く月を見て、いつものように頭に浮かんだ光景があった。
あの時ハイデリンと切り結んだ、あの光に溢れたどこかで、唯の人に戻ったヴェーネスがどこか遠くを見つめていた。その表情はどこまでも明るく、穏やかだった。果てしない時を待ち続けた彼女の心からの笑顔を嬉しく思った。
すると、彼女の隣に光が集まった。白いローブ姿の人を成したそれは、ヴェーネスに寄り添う。隣を振り返った彼女は驚いた表情のあと、笑顔を見せた。誰の顔にも浮かんでいることを見たことのないくらい、何にもとらわれない安寧を得たような、見ているこちらの心の奥に潜む不安まで解かれるような笑顔だった。その光と肩を寄せ合って、ヴェーネスの静かな声が、遠くからそれを見つめるこちらにまで、わずかに届いた。
「必ず逢えると信じていましたよ、あらゆる世界に居て、もう何処にも居ない貴方を……」
その光は、頷いたように見えた。ヴェーネスとその光は笑いあったまま、眩しさの中に溶けていくように消えた。
そうして、いつもの過去視のようにその光景は掻き消えて、変わらず夜空には月と星が浮かんでいた。そこにはもう、闇も、絶望も、星をたばねたかつての人も居ない。
役目を終えて眠りについたあの人が、どうか巡って、穏やかに居られますように。
遠く輝く白をしばらく見つめて、窓を閉じた。